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石橋を創って渡る。

日々の創作日記。 このブログは、パソコン版表示を推奨します。 記事は横へと動くようになってます。

ナナセと本を助けに行く話。-1-

僕の友達にナナセ(仮名)という男がいて、これがとにかく〝ぶっとんだ〟人間だった。常識はずれというか、一緒に居るだけで非日常が味わえる、歩くテーマパークのような男である。石橋を叩いて渡る派の僕にとっては、ナナセはとても恐ろしい存在ではあったけれど、出会ってから今に至るまで、僕は彼と居て退屈したことはなかった。

本当にあった出来事をそのまま書いてしまうと、彼に迷惑が掛かるので、ところどころすこし嘘も含めて、

「ナナセと本を助けに行く話」をする。

 

 

 

高校を卒業したあと、友達のほとんどが都会の大学や専門学校に進むなか、僕は田舎に残って家業を継ぐこととなった。この家業を継ぐというのが、正直とても刺激のない生活で、友達のSNSを覗くたびに、都会の華やかな生活に憧れを抱いていた。

歩くテーマパークであるナナセも、某大学に進学して、以前と比べて会う回数も減ってしまい、僕は寂しい日々を過ごすことが多くなった。「友達ってこうやって減っていくのかなぁ」と思いつつ、ふとカレンダーを見ると、もうすぐ〝夏休みのない夏〟がやってこうとしてた。

 

社会人になった時、〝夏休みのない夏〟というものがとても嫌だった。けれど友達が都会に行ってしまったので、普通の休みの日ですら予定がなく、夏休みなんて別になくて良かったと思うようになった。そもそも深い付き合いをしていたのは、ナナセを含めて五人くらいだったので(全員が大学へ進学)、こうした生活になることは何となくは想像していた。

そんな〝夏休みのない夏〟の、ある休日、ナナセからこんなメールが来た。

〝今から迎えに行く ナナセ〟

久しぶりに会えるのは嬉しいが、メールの文面からは嫌な予感しかしなかった。

 

メールが来てから六時間後に、ナナセが車で僕の家にやってきた。嫌な予感はしていたけれど、久しぶりに友達に会うというのは嬉しいもので、僕はニコニコしながらナナセの車に近づき、「久しぶりー。元気だったー?」と言った。

するとナナセは、運転席の窓を開けて「早く車に乗って!」と怒鳴った。どうもかなり慌てているようだったので、僕は「はい!」と良い返事をして、すぐに助手席に乗り込んだ。すると車はすぐに発進し、僕は充電が六〇%の携帯電話のみの装備で、強制的に外出することとなった。

長年の付き合いから、ナナセが怒っている時はそっとしとくのが一番とわかっているので、しばらく沈黙のドライブが続いた。「どこに行くのかなぁ」「この車買ったのかなぁ」「そういえば友達とドライブするの初めてじゃん」とか考えていると、車はするすると高速道路に入っていった。

これはさすがに僕も予想外だったので、「ナナセ! どこに向かってるの!」と叫ぶと、ナナセは「東京」と言った。

「何んでだよ!」と僕が叫ぶと、ナナセは「お前に本を助けてやってほしい」と言いった。

もう何を言っているのかもわからないまま、僕は充電が五五%の携帯電話のみの装備で、憧れを抱いていた都会へと向かったのであった。

                                   つづく