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石橋を創って渡る。

日々の創作日記。 このブログは、パソコン版表示を推奨します。 記事は横へと動くようになってます。

さようなら六月

  今日は書く時間がなかったので、過去の駄作をコピペ

 

六月が荷造りをしていたので、「もう出ていくの?」と私は聞いた。六月は〝父の日〟を綺麗に折り畳みながら、「明日からは七月が来るから」と言った。その声があまりにも柔らかかったので、私はとても寂しい気持ちになってしまった。

次に六月に会えのは十一ヵ月後で、もちろん私は今よりも歳をとっている。六月はそのままなのに、私はどんどん老いてくのだ。

「七月なんか嫌いよ。気温は高いし、紫外線は強いし、蚊に刺されるし、蝉はうるさいもの。それに私泳げないし」

ぐちぐち文句を言っていると、六月はそっと近づいて「そんなこと七月の前で言っちゃダメだよ」と言いながら、私の頭を撫でた。六月はいつだって誰にでも優しくて、私は彼のそんなところ唯一嫌いだった。

六月のカバンには〝父の日〟や〝衣替え〟、〝アジサイ〟や〝夏至〟などが綺麗に詰め込まれ、私の部屋はなんだかすっきりとしてしまった。〝夏至〟くらいは置いていけばいいのに、六月は毎回忘れ物なく私の部屋を出ていく。

 

夕食を食べた後、私は六月を散歩にでも誘おうとしたけれど、外ではちょうど雨が降り始め、散歩どころでは無くなってしまった。すこしすれば止むかと思ったけれど、雨はどんどんひどくなる一方で、とても外に出られる状況ではなかった。

私はなんだかイライラして、六月のカバンに〝梅雨〟も入れてやろうかと考えたのだけれど、彼の困った顔を見るのが嫌だったので、何とか思いどどまった。。

散歩を諦めた私は、六月とオセロをして遊んだり、映画を見たりして過ごした。映画は失恋の物語で、彼は珍しく涙目になっていた。久しぶりに六月とのんびり過ごすことができて、私は明日なんか来なければいいのにと思った。

 

目が覚めると、私には毛布が掛けられていた。外を覗くと雨はもう上がっていて、カエルの鳴き声が微かに聞こえてきた。部屋を見わたして、「六月?」と呼んでみても、返事がなかった。時計を確認すると、もう深夜の十二時を過ぎてしまっていた。

ふとオセロ盤の上を見ると、そこには一輪のアジサイが置かれていた。あの六月が何か残していったのは初めてのことで、私は部屋でひとり、ニヤニヤとしてしまう。

来年の六月とは何をしようか考えながら、私はアジサイを活ける花瓶を探すことにした。